(資料)


   キリスト教へ抑圧強化=弁護士に「ざんげ」迫る―十字架撤去に抗議 ・ 中国


 時事通信 2016年2月26日(金)17時25分配信


 【北京時事】中国共産党・政府は沿岸部の浙江省で、キリスト教教会の屋根に取り付けられた十字架を強制撤去したり、撤去に抗議する信徒を相次ぎ拘束したりするなど抑圧を強めている。
 同省温州市の政府系サイト・温州網は25日、十字架撤去に抗議する教会や信徒を支援し、昨年8月に拘束された人権派弁護士・張凱氏が温州で信徒の抗議集会を画策・組織したと報道。張氏が当局に迫られ、「社会秩序を混乱させ、国家の安全に危害を与えた」として「ざんげ」したとする映像も放映された。
 キリスト教徒は公認・地下教会を合わせ、中国全国で「1億人近くで、共産党員(約8700万人)を上回っている」(キリスト教徒の人権派弁護士)と推定される。1990年代以降、経済成長に伴って貧富の格差が拡大し、精神的な支えとして信徒数は増え続けた。

 特に信徒が多い浙江省では、横暴で腐敗にまみれる共産党の幹部への求心力は低下し、キリスト教信仰が拡大した。警戒を強めた浙江省の党指導部は2014 年初め以降、抑圧政策を強め、「違法建築」の名目で十字架の撤去に着手。地下教会だけでなく、公認教会も対象に、これまでに十字架が撤去された教会は 1300以上に達し、信徒と政府の対立は激化した。

 こうした中、昨年8月25日に連行されたキリスト教徒の張弁護士は、十字架撤去に抗議す る温州の100以上の教会の委託を受けて法律顧問に就き、約30 人からなる弁護団を結成。温州網によると、張氏は「15年7月以降に温州の街頭などで行われた10件以上の違法集会活動を裏で画策した」ほか、「海外組織 から資金援助を受け、海外の指令を直接執行した」とされる。 





   2016/01/12 -16:42

  【北京時事】昨年7月上旬、中国の人権派弁護士や活動家ら300人以上が一時的な事情聴取も含めて一斉連行された弾圧から半年が過ぎた。なお30人以上は 今も拘束されたまま。「夫は拷問を受けているかもしれず、生死も分からない」。夫の釈放と消息を求め、人権派弁護士の妻たちが立ち上がり、闘っている。
  人権派弁護士らの一斉拘束が始まったのは昨年7月9日。拷問や死刑に反対し、冤罪(えんざい)をなくす活動を展開した著名人権派弁護士・李和平氏や、人権 侵害案件を多く扱った弁護士・王全璋氏は翌10日に拘束された。今月12日、王氏が「国家政権転覆」容疑で正式逮捕されたことが判明したが、この半年間、 家族らに正式通知はなく、当局は「国家の安全を危うくする」恐れがあるとの理由で弁護士の接見も認めていない。
 李氏の妻・王峭嶺さん(43)や 王氏の妻・李文足さん(30)は共に、残された幼い子供を連れ、夫の案件を捜査している天津市の公安当局や、拘置されている可能性がある拘置所に何度も出 向き、釈放や面会を直接要求した。夫の拘束を国営メディアの報道で知った李さんは「半年間も1人の人間が訳も分からず失踪し、とても傷ついている」と目を 赤くした。
 李さんの3歳の息子は事情をよくのみ込めておらず、「パパはどこに行ったの」と尋ねる。祖父母宅に連れて行こうとすると、「僕は行か ない。北京でパパが戻ってくるのを待つ」と聞かなかった。王さんは夫の李氏の活動を文章に書き、ネットで公表している。「多くの人に真相を知ってもらうた め力を尽くしたい」と毅然(きぜん)と話した。
 多くの仲間が2人を支援している。人権派弁護士・余文生氏の妻・許艶さん(35)もその1人。余氏は14年10月、香港の民主化デモに声援を送った人物の弁護を引き受け、接見を要求したら99日間も拘束され、拷問を受けた。昨年7月にも一時拘束された。
 許さんは「夫が戻って来たのは他の人権派弁護士や友人らの助けがあったから。私は彼女たちの苦悩が分かる。多くの人が支援するよう望んでいる」と語った。



  日本人やスウェーデン人、米国人など拘束次々

 中国での言論弾圧が、外国人にまで及んでいる。1月19日夜、中国当局に拘束されていた人権活動家のスウェーデン男性が中国中央テレビに出演し、「謝罪」を行った。

 謝罪を行ったピーター・ダーリン氏は、中国の人権活動家に法的援助などを提供している米NGO「チャイニーズ・アージェント・アクション・ワーキング・ グループ(チャイナ・アクション)」のメンバーだ。同氏は1月4日、中国当局に拘束されていた。スウェーデン外務省は25日、同氏が釈放されたと発表して いる。

 国営の新華社通信によると、同氏の所属する「チャイナ・アクション」は海外から多額の資金を受け取り、中国の人権に関する虚偽の情報を国外に流していた という。ダーリン氏の恋人の中国人女性も行方が分からなくなっており、刑事拘留されているのではないかと考えられている。

 ダーリン氏は、「中国政府や中国国民の感情を傷つけたことを心から謝罪する」と述べ、これまでに支援した活動家3人の名前を挙げた。3人は既に中国当局に拘束されている。チャイナ・アクションはダーリン氏の容疑について、事実無根だと主張している。

 昨年から、中国による外国人拘束、逮捕が相次いでいる。昨年9月には日本人2人が、それぞれ北朝鮮国境付近と、浙江省の軍事施設付近で拘束されていたと 明らかになった。昨年6月に上海で拘束された日本語学校幹部の女性は、11月正式に逮捕されている。同じく6月に北京で拘束された男性は、脱北者の援助を 行っていたとされており、刑事勾留とされている。

 9月には、米国人女性が当局によってスパイ容疑で逮捕されている。ベトナム出身の企業家サンディ・ファンギリス氏は、昨年3月、ビジネス訪問団の一員として訪中した際に広東省マカオの出国ゲートにて拘束され、9月までの半年間軟禁状態に置かれた後、正式に逮捕された。

 12月には、フランス人記者ウルスラ・ゴーティエ氏が、ニュース誌「L’Obs」に掲載した記事についての謝罪を拒否し、国外退去となった。ゴーティエ 氏の記事によれば、習近平中国国家主席がフランスのオランド大統領と会談し、テロとの戦いでフランスに協力すると述べた数時間後、ウイグルのテロ容疑者の 逮捕が発表された。

 新疆ウイグル自治区では9月、炭鉱が襲撃され46人が死傷する事件があり、ウイグル族出身の9人が指名手配されていた。ゴーティエ氏は記事内で、逮捕に は「裏の意図があるのではないか」とコメントしていた。中国当局は、記事が「暴力行為を正当化するもの」とし、謝罪をしなければゴーティエ氏の記者証の更 新を拒否するとしたが、同氏は謝罪をせず、今年1月に事実上の国外退去処分となった。

 中国人向けの言論統制の動きはさらに顕著だ。ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、少なくとも、2015年7月から9月にかけて300 人以上の中国人 弁護士、弁護士助手、人権活動家などが、警察当局によって拘束された。うち少なくとも11人が正式に逮捕されており、罪状は「国家政権転覆罪」が6人、 「国家政権転覆扇動罪」が4人、「証拠隠滅幇助罪」が1人だという。「国家政権転覆罪」は首謀者と認定されれば、終身刑が下される場合もある。 

 習近平政権誕生以来、2014年11月に「反スパイ法」が制定されるなど、言論の自由への締め付けが強まっている。2015年9月には、50の報道機関 が「党と国家の印象を損なうような意見を発表あるいは広める」ことはしないとする」自主規制協定に署名し、10月には政府の政策に対する党員の否定的発言 を禁じる行動規約が承認された。

 1月17日には失踪していた香港の出版社株主が、飲酒運転による死亡事故に関与したとして、中国公安当局に出頭したとの報道があった。翌18日、同じく 失踪していた書店株主が中国本土にいると発表された。中国指導者を批判する書籍を扱う、香港の「銅鑼湾(トンローワン)書店」関係者では、さらに3人の行 方が分からなくなっている。

 昨年8月には、天津での爆発事故や「抗日勝利70周年記念式典」などについてインターネット上で誤ったうわさを広めたとして、200人近くが罰を受けたと報じられた。中国国内の言論統制の対象は、党員やメディアから一般国民にまで及んでいる。

 こうした動きの背景として、英国のエコノミスト誌は、中国経済の減速があると分析する。経済成長の低速化が国民の不満につながり、党の支配体制に影響をあたえかねないとの不安が、言論統制の強化につながっているという。






   2015年9月1日(火)

 中国の習近平政権の人権弾圧はとどまるところを知らないようだ。

 米国では、中国政府の人権弾圧を理由に、各方面から習主席の9月の訪米に非難が浴びせられるようになった。特に共産党政権によるキリスト教徒への組織的な弾圧に対する反発が強いようである。
 「中国当局は浙江省だけで、この1年半に合計1500本以上のキリスト教会の十字架を破壊し、撤去しました。その暴挙に反対するキリスト教信徒たちが次々と逮捕されています。習近平政権の異常なキリスト教弾圧の一環なのです」
 中国でキリスト教徒を擁護する国際人権団体「中国援助協会」のボブ・フー(中国名・傳希秋)会長が熱を込めて証言した。

 米国の「中国に関する議会・政府委員会」が7月下旬にワシントンで開いた公聴会での証言である。この委員会は、立法府と行政府が合同で中国の人権や社会の状況を調べ、米側の対中政策の指針とすることを目的とした組織である。
 米国連邦議会の内部で開かれたこの公聴会は「習近平の中国での弾圧と支配」と題され、中国政府による宗教や信仰に対する弾圧を報告していた。米国の国政の場で、習政権の人権弾圧への非難が一段と高まってきているのである。


■ 暴君ネロを思わせるようなキリスト教弾圧


 この公聴会では、チベット民族、ウイグル民族、気功集団に対する当局の大規模かつ容赦のない弾圧行動が詳しく報告された。それぞれの被害者たちの代表が登場し、弾圧の実態を証言した(その証言の内容は本コラムでも報告してきた)。

 それら各方面に対する弾圧のなかで特に強い関心が向けられたのが、キリスト教への仮借のない抑圧である。米国は基本的にキリスト教徒の国である。そのため、その種の弾圧はたとえ中国の国内での出来事であっても、米国の議会はもちろん国民一般にも深刻に受け止められる。

 中国における現在のキリスト教弾圧は、ローマ帝国の暴君ネロのキリスト教迫害をも思わせるほどのひどさだと言ってよい

 大手紙「ニューヨーク・タイムズ」(8月11日付)も、中国当局がキリスト教会十字架を撤去したことについて「教会の十字架を撤去する中国当局の試みが 反発を招いている」との見出しの記事で詳しく報道した。中国政府がキリスト教のすべての教会の十字架を撤去するという新方針を打ち出し、実行し始めた、と いう現状を伝える記事だった。

 「中国に関する議会・政府委員会」の共同議長を務める共和党のマルコ・ルビオ上院議員も、公聴会の冒頭で「今、習近平政権は文化大革命以来の最も苛酷な弾圧を実行している」と強調した。

 ルビオ議員は上院外交委員会の有力メンバーで、来年の大統領選に向けて立候補した注目度の高い政治家である。特に尖閣問題については、ルビオ議員は一貫して「尖閣諸島は日本に帰属し、中国の行動は侵略に等しい」と述べている。


■ 当局公認の教会も十字架を破壊


 フー会長はさらに証言を続けた。

 「中国当局は『家庭教会』と呼ばれる非公認のキリスト教会を邪教と断じ、信者の多い浙江省内だけでもここ1年半に50の教会を破壊し、信者1300人を逮捕しました。当局は、特に信仰のシンボルとなる十字架の破壊を頻繁に行っています」

 フー会長の証言によると、中国政府は共産党の無神論に基づく宗教弾圧だけでなく、キリスト教の外国との絆を敵視して抑圧を強化し始めたという。

 中国には、当局が公認するキリスト教組織として「三自愛国教会」や「天主教愛国会」がある。その信徒は2000万人強とされる。それ以外に5000万〜1億人ほどが当局の禁じる家庭教会(地下教会)の信者だと見られている。沿岸部の浙江省には特に信者が多い。

 最近は家庭協会だけではなく、当局公認の教会も十字架が破壊されるようになり、キリスト教信者の心配が高まっている。教会は、尖塔の上に十字架を掲げる ことが禁止され、建物前面の最上部ではない壁に十字架を埋め込むことを命じられるようになった。それに反対する牧師や信徒は即座に拘束されるという。

 こうした現状を証言したフー氏は、中国の山東省生まれの中国人である。大学生時代の1980年代にキリスト教に入信した。民主化運動にも関わり、天安門 事件にも参加した。90年代には中国国内でキリスト教の布教に従事して弾圧され、亡命の形で米国に渡る。そして2002年に「中国支援協会」というキリス ト教支援組織を創設し、中国にいる信者たちと密接に連携しながら活動してきた。現在は米国籍である。

 フー氏は、公聴会に並んだ上下両院議員や政府代表に対して、中国政府に人権弾圧をやめさせることを対中政策の中心とするよう迫った。さらに、9月に予定される習主席の米国公式訪問も、中国の人権政策の修正を前提条件につけることを求めた。

 中国当局は9月3日に「抗日戦争勝利」を祝い、“ファシズムに対する勝利”を大々的に宣伝するという。だが、ファシズム政権でもこれほどひどくはなかった宗教や信仰の抑圧を現在の中国共産党政権が実行している事実は、改めて銘記されるべきであろう。





             戻る